食べ物は、日々、わたしたちの肉体となり、わたしたちの精神を支え、わたしたちがあらゆる活動をするための活力を与えてくれます。生きていくためにはなくてはならない大切なものです。そして、良いものを食べるということは、良く生きるということにつながっているのです。
では一体、良い食べ物とはどんなものでしょうか。これから良い食べ物、良い素材について、少しずつ考えながら、それらをご紹介していきたいと思います。
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<素材のはなし>
(1)玄米
玄米とは
もみがらを除いただけの、精白していない米を玄米といいます。もともと白米に対して"くろごめ(黒米)"という意味を当てはめた音読"くろごめ(玄米)"からその名が来ています。実際の色はうすい褐色です。
現代社会では圧倒的に"白米食"が主流となっていますが、ここでちょっと玄米について見直してみたいと思います。
栄養価
玄米は体に良いと聞くことも多いですが、実際どのような面で良いと言えるのでしょうか。食品成分表(四訂)から、各栄養素ごとに、精白米と比べてみたいと思います。
玄米は、精白米に比べて蛋白質や糖質は変わらず、脂質は多くなっています。エネルギーはほとんど同じくらいです。しかし注目すべきは、微量栄養素の含有量です。カルシウム、りん、鉄、カリウム、ビタミンB2は、いずれも2倍、繊維、ナイアシンは、3倍、玄米の方が多く含まれています。そして、更に、これに、水と火を加えて調理すると、精白米の栄養成分が、損なわれやすいのに比べ、玄米では保持される率が高いので、その差はもっと開きます。炊飯すると、精白米に比べて玄米の方が蛋白質も2割増しになりますし、繊維、りん、カリウムはそれぞれ4倍に、鉄、ビタミンB1にいたっては、それぞれ5倍にもなるのです。
このことから逆に考えると、真っ白のご飯は、本来持っている大切な栄養素をそれだけ多く失ってしまっているということがわかります。大変もったいないことですね。
玄米は精白米よりも安価であるにもかかわらず、栄養価は数段高いのです。
炊飯方法
栄養価が高いということがわかっていても、なかなか玄米食を実践できないという方も多いでしょう。その原因の一つに、うまく炊きにくいということがあげられます。最近では、大型の水飯器で玄米炊き機能を持ったものも出ています。むろんそういったもので炊くというのも良いでしょう。しかし、家族が少なく大型の水飯器で炊いた分を食べ切れないという場合や、できあがるまでに時間がかかりすぎるなど、不都合な場合もあると思います。そういう場合は、圧力釜がたいへん便利です。ガス式と電気式が市販されていますが、電気式だと、予め1時間ほど水を含ませておいた玄米を、1.2気圧の下で30分間、またその前後、気圧があがるまでと、気圧が下がるまで(蒸らし)の時間を含めて、1時間程で、ふっくらと香ばしくやわらかく炊きあげることができます。タイマーセットも可能です。
おいしさ
さてそれでは、炊きあがった玄米を実際に食べてみると、味の方はどうでしょうか。
まず精白米に比べて、表面の部分に少しかみごたえがあります。これは繊維分がそこに多くあるためです。しんはやわらかくなっています。また、表面には、他に各種の栄養成分が複雑に多く含まれているので、それだけこくと香りがあります。かめばかむほど味わい深くおいしいご飯です。
よりおいしく玄米を炊くこつは、炊く前の釜にお米と水を入れたその上から数滴のごま油をたらしておけば、炊きあがったときにはごま油が玄米の表面にいきわたっていて、ほんのりとより香ばしく、食べやすくなります。玄米食に慣れてしまうと、真っ白でつるつるの精白米のご飯を食べたら、なんだか物足りないような気にさえなります。
心も体もナチュラルに
自然素材の良さを積極的に取り入れた食生活を送るということは、心も体もよりナチュラルになるということです。わたしたちのいのちを支えてくれる毎日のご飯のことだからこそ、ちゃんと考えていいものを食べいきたいですね。玄米はそんな、自然の食生活には欠かせない存在だと思います。
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<本>
以下に、料理の実践に役立つ本を紹介します。
・『nonnoお料理基本大百科- Encyclopedia of Basic Cooking-』集英社
まず料理のビギナーにはこの本がお勧めです。とても基本的なこと"料理のいろは"から、詳しい部分までのっています。ページごとにカラフルな構成の画面が、料理を作る気分を盛り上げてくれます。作り方が段階をおって写真つきで説明されています。また出来上りの見本写真も大きく、所要時間の目安も示されていて、イメージがつかみやすく作業しやすくなっています。
・『素材 de 料理 クッキング新事典 (1)野菜・肉・卵・山菜・きのこ・乳・スパイス・ハープ』学研
・『素材 de 料理 クッキング新事典 (2)魚介類・果実・豆腐・豆・藻類・種実・ナッツ・穀物・米・パン・めん』学研
料理の極意は、素材を活かすことにあるのではないでしょうか。料理のことがある程度わかった段階にあれば、より詳しく素材の知識を得て、それを活かした料理のバリエーションを更に増やしたいものです。そんな要望をかなえてくれるのがこの本だと思います。料理名でなく、素材名から探していく方法がとられています。二冊にまたがる大版となっていますが、逆に、この二冊さえあれば、大概のことは調べられてとても便利です。
料理の基本をマスターし、素材についての知識を持てば、あとの応用はいくらでもきいてきます。"料理の経験"を素材に、そこからつちかった"料理のセンス"のスパイスをちょっとふりかけてみれば、料理の世界はどんどん広がっていくでしょう。
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