Windowsプログラムを10倍強力に作る

 本書は先に刊行された『Windowsプログラムを10倍簡単に作る[95/98/NT対応C言語版]』の続刊である。主力開発言語をC言語から C++ に変え、より踏み込んで 32bit Windowsプログラミングを解説している。
 姉妹編の『Windowsプログラムを10倍簡単に作る』の目的は 5倍は手間が掛かると言われる Windowsプログラミングの常識を覆し、簡単に 32bit のグラフィックス・プログラムを作ることであった。Windows95/98/NT にプログラムを移植したい人、プログラミングをあきらめていた人、そして、これからプログラミングを始める人に最適な内容としていた。
 本書『10倍強力』の目的はプログラムの拡張である。プログラムをより強力に拡張することにある。そのため、C言語ではなく、C++ を使用する。例えば多重定義やテンプレートと言った C++ の最新機能を使用すれば、8色16色系とフルカラーの扱いを調和させることが出来る。既に作られた関数の引数拡張なども簡単に出来る。
 1972年のC言語誕生に続き、C++ が誕生したのは 1982年である。C++ が誕生して、既に相当の年月が経過しているのに、C++ はまだそれほど普及していない。普及が遅れているのは C++ の様々の機能をどう生かして行ったらよいのか分からないというのが 1つの理由であろう。
 C++ のオブジェクト指向の面ばかりが強調され、面倒で実用的でないという印象を持たれてしまったのではなかろうか。本書では C++ の各機構を整理し、うまく使い分ければ非常に強力なプログラミングが簡単に出来ることを示している。そのため、Windowsプログラミングを始めたいが、ついでに C++ も学んでしまいたいというCプログラマに最適な内容となっている。
 姉妹編の書名『10倍簡単』は後から付いた名前だけのものではなく、執筆当初から10倍簡単を目指していた。本書の『10倍強力』も同様である。
 MS-DOS や UNIX で作った多くのプログラムを抱え、これをより強力なものにしたい場合、まずは姉妹編『10倍簡単』に従ってそのまま Windows95/98/NT に移植するとよい。移植が出来たなら、本書『10倍強力』に従って徐々に拡張すればよいだろう。
 Windowsプログラムの基本や、10倍簡単にプログラムを作れる原理などは姉妹編『10倍簡単』で述べられている。姉妹編『10倍簡単』により、一通りのことを身につけた上で、本書『10倍強力』に取り掛かるのが近道である。新しい OS でプログラミングをする以上、まずは 32bit Windows用C/C++コンパイラを選ぶこと、そしてそのコンパイルの仕方からやらなければならず、これらは姉妹編『10倍簡単』で解説している。
 本書は、TeX(テフ)というコンピューター組版言語システムを使用し、筆者自らが版下作成まで行った。TeX が LaTeX2ε という新しいシステムに変わり、TeX で画像が扱えるようになり、従来に比べ格段にきれいな仕上がりとなった。
 本書の出版にあたっては、共立出版(株)の坂野一寿さんに大変お世話になった。印刷所の(株)加藤文明社の原田吉雄さんには、LaTeX2ε についていろいろ教えて頂いた。また、妻の里美には難しい話を良く聞いて頂き、分かりやすくて かわいいイラストを描いてもらった。
 本書で使用する C/C++ の用語は『ANSI C/C++辞典』(平成8年1月25日共立出版発行, 定価6,695円(本体6,500円), ISBN4-320-02797-3 C3541)に準じているので、不明の点は参照していただきたい。


 平成11年(1999年)7月20日

Hirabayashi Masahide
平林 雅英   



※本書は『Windows95プログラムを10倍強力に作る[C++版]』(1996年(平成8年)5月25日、共立出版(株)発行)を最新の 32bit Windows 環境に合わせて改訂増補したものです。

※本書の版下は著者自身が日本語 LaTeX2ε(pLaTeX2ε)で組版し、(株)加藤文明社が PostScriptイメージセッタにより面付フィルム出力したものです。


姉妹編『Windowsプログラムを10倍簡単に作る[95/98/NT対応C言語版]』序文